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音楽にかまけて その4 〜お酒とコーヒーと音楽の店 楽屋 青山将之



休憩室×音楽屋×くつろぐ場所。そんな意味を込めて名付けられた楽屋さんは、音楽を聴きながら気軽に飲めるお店です。
レコード・CDの数は、村上で一番!オーナーが集めたジャズをメインに、ブルースやボサノバなどが揃います。また、軽食には注文を受けてから作るというポップコーンや、お酒の〆に大人気のお茶漬けパスタなど、こだわりのメニューがありますよ。
『明朗会計の気軽な音楽酒場』、楽屋で日常空間を少し離れ、音楽に浸ってみませんか?

 

 

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 <ジャッキー・マクリーン>

 


とあるにぎやかな夜、何の気なしにジャッキー・マクリーンの「スイング・スワング・スインギン」を回すと、ふと映画館のことが思い出された。この映画館とは映画を観る場所のことではなく、東京白山にあるジャズ喫茶「映画館」である。
90年代、地下鉄三田線で会社勤めをしていたわたしは、帰り道たまに白山で途中下車してこの映画館に寄っていた。お店と客との距離感が心地よく、マスターのお母さんが作る高菜炒飯がめっぽううまかった。
わたしはここでいろいろなレコードを聴かせてもらったが、その中の1枚が「スイング・スワング・スインギン」だった。シンプルな演奏が気にとまり、ジャケットに目をやると、ジャケットもいい。アルトサックスを吹く薄紫色のマクリーンがとてもかっこよく見えた。これはレコードでほしいと思った。派手さがないためか、地味なB級グルメのように評されることもあるマクリーンだが、わたしはその地味さが気に入っていて、楽屋では出番の多い奏者のひとりとなっている。

 

 

 

 <ジョシュア・レッドマン>

 


小国と酒田のミュージシャンで組まれた5人編成のバンド、Kon Takuo Modal Soulの演奏を楽屋で聴く。
ジャズのスタンダードからマニア向けの曲まで、バリエーションに富んだ選曲の中で、オーネット・コールマンの「ターン・アラウンド」が演奏されたことがうれしかった。
この曲をわたしは、米国のサックス奏者、ジョシュア・レッドマンの2作目『ウィッシュ』で知った。今さんたちのライブをきっかけに、しばらく聴いていなかったジョシュアのCDを引っ張り出して、このところよく聴いている。
彼のCDを聴き出したころ、彼もわたしも20代の後半だった。ハーバード大学卒のジャズマンとは、同世代で何ともすごい人が現れたものだと、日々の残業に疲れた会社員のわたしは思った。
ジャズの名門、ビレッジ・バンガードでのライブを収録した『スピリット・オブ・ザ・モーメント』(1995年)は、若き日のジョシュアの快演が聴ける傑作。ではあるが、思えば2000年代以降の彼をほとんど聴いていない。この機会に、その後の作品を聴いて行きたい。

 

 

 

 <ミシェル・ンデゲオチェロ>

 


米国のベーシスト、ミシェル・ンデゲオチェロのライブを観る。
シンガーソングライターでもありボーカリストでもある彼女のベースを弾き語る姿を初めて観て、さらにミシェル熱が高まった。
浅川マキの音楽ジャンルを聞かれても浅川マキとしか答えようがないのと同様、ミシェル・ンデゲオチェロの音楽もまた、ジャンルなどではくくれない独特の世界観がある。
彼女を紹介する文章ではよく、ソウル、ジャズ、ファンク、ロック、ヒップホップなど、様々な単語が入り乱れている。そのあたりが好きな人には、彼女の音楽はきっと興味深いものだと思う。
前回とりあげたサックス奏者、ジョシュア・レッドマンの参加を得た「ピース・ビヨンド・パッション」(1996年)と、ニーナ・シモンが歌った曲を独自のアレンジでカバーしたトリビュート作品「至高の魂のために~ニーナ・シモンに捧ぐ」(2012年)が、とくにわたしの気に入り盤。
ちなみにンデゲオチェロとは、スワヒリ語で「鳥のように自由に」という意味らしい。このセンスがいい。

 

 

 

 <ジョシュア・ブレイクストーン>

 


米国のギタリスト、ジョシュア・ブレイクストーンさんが楽屋にやってきた。
80年代から米国のジャズ界で活躍してきた大ベテランに来演してもらえるというのは、感激なことであるのはもちろんだが、やはり緊張もした。
ライブ当日の夕方、楽屋に着いたジョシュアさんは、まずわたしに京都ろくでなしのTシャツをプレゼントしてくれた。京都のろくでなしは楽屋の原点となるジャズ喫茶で、ジョシュアさんは縁があって現在京都に住んでいる。ライブが決まってからメールでやり取りをして、お互いのことを少し知ってはいたが、この粋な計らいには驚いた。
お客さんにも気さくに話しかけるジョシュアさんのライブは、なごやかな雰囲気の中にありながら、ベース文河潤さん、ドラムス本間克範さんとともに、アドリブ合戦満載の、これぞハードパップという激烈なものだった。人柄と演奏。ともに素晴らしいのが、やはり一流のミュージシャンなのだと思う。
ジョシュアさんのギターを聴くなら、最新作「チルドレン・オブ・アート」がお薦め。

 

 

 

 <アート・ペッパー>

 


好きな曲の入っているアルバムなら奏者は知らなくとも買ってしまう。とくにジャズのレコード収集にはそういうことがよくあると思う。
ジャズのスタンダード曲は無数の奏者に演奏されているので、曲によっては相当数のバージョンの聴き比べができる。
コール・ポーター作曲の「You’d be so nice to come home to」も多くのミュージシャンに取り上げられる定番曲で、楽屋にも同曲収録のいくらかの盤があるが、奏者によって表現の仕方が異なり、おもしろい。
中でもわたしは、アート・ペッパーのアルトサックスにピアノ、ベース、ドラムスというカルテット編成で吹き込んだ「Art Pepper meets The Rhythm Section」の演奏が気に入っている。力の抜けたペッパーのアルトの音色がいい。この盤はリズム・セクションも素晴らしく、あまり目立たないがポール・チェンバースのベースも大きな聴きどころだと思う。
ちなみにこの曲は、その昔ジャズ評論家の大橋巨泉によって「帰ってくれたらうれしいわ」という邦題がつけられたが、実は「君のもとへ帰りたい」と立場が逆の意味が正しいらしい。英語はむずかしい。

 

 

 

 <菊地雅章(きくち・まさぶみ)>

 


日本ジャズ界の重鎮、峰厚介のライブを久しぶりに観る。
相変わらず迫力のあるテナーサックスの連射に感動。御年75歳とは、とても思えない。その日はピアニスト菊地雅章(きくち・まさぶみ)の4回目の命日とのことで、峰さんは菊地雅章の作った「リトル・アビ」を演奏した。峰さんと菊地雅章は、長年にわたって盟友のような関係にあったと思う。
「リトル・アビ」は、1974年に出された峰さんのリーダー作「OUT OF CHAOS」に、峰さんと菊地雅章のデュオで収録された美しいバラード。
峰さんの作品の中でこのアルバムが一番好きなわたしは、まさかこの曲がライブで聴けるとは思っていなかった。しっとりと流麗に、少し悲しい音色を奏でる峰さんを見て、この曲は菊地雅章にとってはもちろん、峰さんにとってもきっととても大切な曲なのだろうと思った。
菊地雅章は、トランペッター日野皓正と組んだクインテットでも名演を残している。
1968年録音の「HINO=KIKUCHI QUINTET」、1995 年ブルーノート東京でのライブ盤「MOMENT」が、わたしのお気に入り盤。
菊地雅章のピアノを、生で聴いてみたかった。

 

 

 

 <ブルースバンドすし>

 


自室のちらかりを整理していると、すっかり聴かなくなったカセットテープが出てきた。懐かしいものをラジカセでかけてみたが、そのほとんどが伸びてしまっていて、演奏は遅く、声が低い。
その中で唯一、ブルースバンドすしの「ライブ・オン・新宿西口歓楽街」は、心あるお客さんに数年前CDRに焼いていただいたおかげで、今でもきちんとした再生速度で楽しむことができる。改めて、ありがたい。
会社勤めをしていた90年代なかば、たまたま新宿のアルタ前でブルースバンドすしの演奏を聴いてファンになり、ライブ情報を追いかけては路上やライブハウスで彼らの演奏を楽しんだ。
ブルースやソウルを独自に日本語でカバーした曲が秀逸なバンドで、わたしはとくに、マディ・ウォーターズの演奏で知られる「Got My Mojo Working」のカバー曲である「高田馬場ブルース」が好きだった。
自主製作で出した数本のカセットテープと1枚のCDはもはや入手困難となっているが、最近ではYouTubeでも彼らの演奏を何曲か聴くことができる。すごいことだ。

 

 

 

 <友川カズキ>

 


70年代より活躍するフォークシンガー、友川カズキのライブを初めて観た。
ほとんどツアーをしないミュージシャンらしく、新発田という近場で観ることができたのは幸いだった。呼んでくれたスタッフの皆さんに感謝。
ふるさとの秋田ことばをそのまま歌にして、ギターひとつで弾き語る。絶叫とも言える迫力満点の演奏に、息を飲んだ。
中原中也の詩に曲をつけた「サーカス」、代表曲の「生きてるって言ってみろ」や「ワルツ」が目の前で聴けて感激。
この春亡くなった遠藤ミチロウさんとも近しく、同い年の彼の死を悼んでいた。やはり同い年で青森生まれのフォークシンガー、三上寛さんとミチロウさんの3人で、「トラトラトラ」というライブを開いていたという。ミチロウさんが福島生まれで、「東北出身のトラ(1950年寅年生まれ)が3匹いる」というのが由来らしい。
毒舌でもある友川さんは「次に死ぬのは三上寛だろう」とうそぶいていたが、三上寛さんの2度目の楽屋ライブがこのほど決まったばかりだ。まだまだ寛さんに亡くなってもらっては困る。

 

 

 

 <友部正人>

 


遠藤ミチロウさんの「音楽葬」が営まれた。約4時間半にわたり、ロックやフォークソング、ピアノの弾き語りから民謡まで、ゆかりのある多種多様のミュージシャンが、それぞれの思いでミチロウさんの曲などを演奏し、濃密なライブとなる。
ミチロウさんと同い年で、70年代より活躍する友部正人の出演が、わたしはとくにうれしかった。昔とほとんど変わらない歌声とアコースティックギター。
初めて生で聴く彼の歌は、もの悲しくも暖かい感じがした。同い年ではあるが、70年代のはじめ、山形大学の学生だったミチロウさんは、すでにフォークシンガーとして名を馳せていた友部正人を山形へ招いてライブを開催している。友部正人の音楽からミチロウさんが受けた影響はかなり大きいと思う。
2作目「にんじん」(1973年)に収録された代表曲「一本道」を、ミチロウさんが楽屋で弾き語ったときは鳥肌が立った。友部正人の歌は、70年代のアルバムでしか聴いたことがない。この日のライブで、今の彼の歌も聴きたくなった。

 

 

 

 <リー・モーガン

 


店のスピーカーを替えて、はや2年が過ぎた。
替えてしばらくは、音楽好きの常連さんから賛否両論があった。「音が生々しくなった」という賛派と、「音がかたい」という否派。音の好みは人それぞれ違って当然だが、わたしは今の音が気に入っている。
リー・モーガンの「キャンディ」は、替えてよかったと思わせてくれた盤の代表的な一枚。モーガンのトランペットの音って、こんなによかったっけ。新しいスピーカーで初めて聴いたとき、そう思った。
やんちゃな不良少年が縦横無尽に吹きまくるようなイメージのモーガンが、タイトル曲「キャンディ」の出だしで優等生のような音色を奏でる。その部分がなぜか際立って聴こえて、新鮮だった。しかし曲も進むと、やはり悪童モーガンは豪快なアドリブをしっかり聴かせてくれる。しかもソニー・クラークのピアノソロもいい。しまいには、このアルバムって、こんなによかったのか、となる。
今までどんな聴き方をしてきたのかと問いただしたくなるが、それから楽屋ではこの盤の出番が多くなるのだった。

 

 

 

まとめ

曲に合った音色を奏で、表現し、音楽の素晴らしさを伝えてくれるミュージシャンたちの演奏。独特の世界を持ったアーティストに引き込まれてしまう人も多いことでしょう。

 

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